ヘルメットをかぶり、もらった小銭を握りしめたまま深呼吸をして一度落ち着くと、説明を受けた通りに機械にお金を入れた。

そして打席に入り、重いバットを練習同様に構える。意識して、肩の力を抜くようにした。

説明通り、さっそくボールが飛んでくる。

思っていたよりも、断然速いスピードで向かってくるボール。

その勢いに身体が固まりそうになるけれど、ボールに目がけて足を踏み込みながら、勢いよくバットを振った。


「あれ……?」


バットにボールは触れなくて、思いきり空振りをしてしまった。

空気を切っただけのバットにつられてまた身体がよろける。

背後のマットにぶつかったボールが近くに転がっていた。

それを見つめていると、間もなくまたボールが飛んできた。

素振りでのフォームを意識してバットを振る。……でも、また空振りだった。

ひいー!
ボールがすごく速いよ!

全然バットにかすりもしないまま、ボールは次から次へと飛んでくる。

振るたびに重くなる金属バットのせいもあり、まだ1ゲームの途中だというのに、わたしは早くもくじけそうになっていた。

そんなわたしに、ナツくんはずっと声をかけてくれている。


「今のフォームよかったよ! あとはもう少し早く振って!」


空振りをするたびに、アドバイスが背後から投げかけられた。
ボールが飛んでくるせいで振り向けないのが惜しい。

でも、声だけでも十分伝わってくる。
ナツくんが、懸命に応援してくれているってことは。