触れられた肩が熱い。

力を抜かなきゃいけないはずなのに、余計に身体に変な力が入ってしまった気がする。

励ましのつもりで、ナツくんは肩を叩いたのだろうけど……。

こんなの、逆効果だよ。

だってそもそもわたし、打つことよりもナツくんに見られていることに緊張してたんだもん。


「唯斗ー、平岡さんが打つからゲーム代ちょうだい。おごるんだろ?」

「おー、そうだったな」


肩と一緒に熱くなった頬を手で覆い、顔がゆるむのを必死にこらえていたのだけど。
そんなふたりの会話が耳に入り、慌ててゲージの外に顔を出す。


「横峰くん、本当におごってもらっちゃってもいいの……?」

「いいのいいのー。ゲーム代ぐらい、平岡ちゃんのためならいくらでも出すからさ!」

「ひ、平岡ちゃん……?」


にこにこと笑う横峰くんに呼び慣れない感じで呼ばれて、思わず苦笑いがこぼれる。

横峰くんはナツくんに、何枚かの小銭を渡していた。


「ふたりとも、頑張ってね~」


手を振る横峰くんに見送られながら隣のゲージに戻る。

……なんか、横峰くんは、お調子者って感じだなぁ。


「じゃあ平岡さん、さっそく打ってみようか。ここにお金入れたら、すぐに打席で構えてね。ボール、すぐ飛んでくるから」

「お金入れたらすぐに構える。……うん、覚えたよ」

「はい、これお金ね。それじゃあ平岡さん、頑張って!」


一連の説明を終えると、ナツくんはゲージの外に出た。

いよいよ、ここからはひとりで打つんだ……。

今まで味わったことのない緊張と高揚に包まれる。