それからまた飛んできたボールを打つけど、それは残念ながら地面にバウンドして上手く飛んでいかなかった。


「茉理、身体開いてるぞ」

「うっさいなぁ。そんなこと言われなくてもわかってるし」


バッティングを見ていた横峰くんにそう返すと、茉理ちゃんは今度はまたヒットを打った。

フォームがさっきと少し変わった気がするから、横峰くんのアドバイスが効いたのかもしれない。


「すごいなぁ、茉理ちゃん。あんなに打てちゃうなんて」

「平岡さんも慣れたら、すぐに打てるようになるよ」

「そうかな……」

「大丈夫だって。沢谷も最初は空振りばっかりだったけど、唯斗が教えてあそこまで打てるようになったから」

「へえ、そうなんだ」


ナツくんの言葉を聞きながら茉理ちゃんを見ると、かなりの確立でバットにボールを当てていた。ヒットかどうかはともかく。

空振りだった人があそこまで打てるようになるなんてすごいなぁ。

やっぱり、指導した横峰くんもすごいのかな。

掲示板のあの新聞では、打率について取り上げられていたぐらいだし。


「心配しなくてもいいよ。平岡さんには、ちゃんと俺が教えるから」


ナツくんはゲージ前でわたしと向き合うと、安心させるように笑ってくれた。

優しい雰囲気の笑みに、じわじわと胸が温かくなる。


「……ありがとう、ナツくん! ナツくんに教わったら打てそうな気がするよ。ご指導、よろしくお願いします!」


ぺこんとお辞儀をしたあとにはもう、不安な気持ちはなかった。