「……えっ?」


……なっ、なんで?

ナツくん今、どうしてわたしのこと指名したの?

ナツくんの突然の発言には、横峰くんと茉理ちゃんさえ不思議そうにしていた。

指名されたわたしが一番わけがわかっていなくて、ぎこちない表情のまま正面に立っていたナツくんを見上げる。

そんな3人の視線を集めながら、ナツくんはにこりと笑ってわたしを見た。


「平岡さん、確か左利きだろ? 俺と同じだからたぶん左打ちのほうが合うだろうし、俺がペアになって打ち方教えるよ」

「なんだ、そういうことかー。それなら確かに、ナツと平岡さんでペアになったほうがいいかもな。俺と茉理は右打ちだし」


ナツくんの意見を聞いて、横峰くんは納得したみたいだった。

わたしも確かに、ペアになる理由は納得できた。

だけどそれよりも、気になるのが……。


「わたしが左利きなの、知ってたの?」


びっくりした。

わたしとナツくんは確かに同じ左利きだけど、まさかナツくんがそれを知っているとは思わなかったから。

ナツくんが左手で球を投げているところや、授業中も左手でペンを動かしているところを見ていたから、わたしは前から気づいてはいたけど……。


「うん。この前一緒に日誌書いた日に気づいたんだ。利き手、お揃いだね」


左手を小さく挙げて笑うナツくんに、きゅうっと胸が締めつけられた。

利き手が一緒だったなんて、たまたまだし些細なこと。

それでも、ナツくんがわたしに目を向けてくれていたんだなって思うと、それだけで嬉しくなった。