ヒートアップしていくやりとりは、ふたりにとっては日常茶飯事のこと。

だから見慣れたものだけど、きっかけに自分が関わっているだけあってさすがに苦笑いがこぼれる。

今日は止めたほうがいいのかな……。

そう思案してると、ナツくんがあっ、と声を漏らした。


「そういえば唯斗、漢字プリントやってないとか言ってなかったっけ?」

「あー、そうだった! やっべー!」


ナツくんの一声で、横峰くんは簡単に茉理ちゃんといがみ合うのをやめた。

慌てて机の中からぐしゃぐしゃになっているプリントを取り出して、必死にそれを真っ直ぐに広げ始める。

あっけなくいがみ合いをやめたその姿に安堵すると、ナツくんも同じように安堵して笑っていることに気づいた。

もしかしてナツくん、わざと仲介してくれたのかな?

ナツくんのことだから、それはあり得るような気がした。

また、助けてもらっちゃったなぁ。

ナツくんは何気ないそぶりでいつも助けてくれるから、何だかかっこよくてずるいよ。


「ナツ、現代文って何時間目だっけ?」

「1時間目」

「げっ、今からやってたんじゃ間に合わねぇじゃん。ナツ、プリント見せてくれよ!」

「えー、やだ」

「ちょっ、このどけち!」


笑顔のまま容赦なく断るナツくんの横顔に笑いそうになった。

現代文の小テストに向けて、漢字プリントを見て勉強を始めていたところだけど、全然集中できそうにない。