横峰くんと楽しそうに会話をしている横顔が、いつもに増してきらきらと輝いて見えた。

だけどまともに見ていられたのは、ほんの数秒間だけ。

ざわざわと焦り出す鼓動に、すぐに限界が訪れる。
咄嗟に、近くにあった円柱の影に隠れた。

肩にかけているスクールバッグの取っ手をぎゅっと握り締めて、気配を消すようにその場で固まる。

周りのざわめきよりも、胸の音の方が大きい気がした。

聞こえてくるナツくんの声が遠ざかったところで、茉理ちゃんが円柱の影にいたわたしを覗きこんできた。


「どうしたの? いきなりこんなところに隠れて」

「いや、ちょっと事情があって。……ねぇ、もうナツくんは教室に行った?」

「えっ、ナツ? ……あー、うん。ここにはいないみたいだけど」


玄関ホールを見渡した茉理ちゃんがそう言うと、やっと気持ちが落ち着く。

ほっと一息をつきながら、円柱の影から出た。

浮かない表情のわたしを、茉理ちゃんは小首を傾げて見てくる。


「もしかして……。この前、ナツとなにかあったの?」


だけど、さすが茉理ちゃんだ。
疑問の言葉とは裏腹に、すぐに表情は勘づいたものに変わる。

いつもナツくん絡みの話題のときはちょっとおせっかいな口調だけど、今は慰めてくれるような優しい話し方だった。


「うん、実は……」


だからこそ、すんなりと茉理ちゃんに話すことができた。

ナツくんへの想いに気づいたこと。
でも、その想いによって振り回されていること。

金曜日の放課後の出来事も含めて、すべてを茉理ちゃんに話した。