おまけに綺麗と表してくれた名前が似合っていると言われて、気持ちは最高潮にまで昇っていく。

すぐそばにあるナツくんの整った顔が笑みを作り、なんだかくらくらした。


トクン……トクン……トクン……。


暴れていた鼓動が、だんだん落ち着いて優しくなっていく。

ただ忙しいだけじゃない、甘いときめきを含んだ鼓動に変わっていった。


……ああ、わたし。

ナツくんに近づきすぎたのかもしれない。


手が届かないはずだったのに、いつしか手を伸ばしたくなるほど魅力にとらわれてしまっていたのかもしれない。

だってこの胸のときめきは、ただの憧れでは説明できないよ。

おかしいなぁ。
見てるだけで、憧れているだけで十分だったはずなのに。

気がついたらわたし、どんどんわがままになってる。

もっと、色んな表情のナツくんを見たい。
もっと、優しさに触れてみたい。

――もっと、ナツくんの特別になりたい。

近づけば近づくほど、いつしかそう思うようになっていたんだね。

……ナツくんを、好きになっていたから。


「あっ、ありがとう。わたしも、似合ってるって言ってもらえて嬉しいよ」


気づいたばかりの気持ちを抱えて、真っ直ぐナツくんの顔を見る。

微笑みながらわたしの言葉を聞いてくれるナツくんがやけに優しく感じられて、心臓がいくつあっても足りないぐらいドキドキした。


ねぇ、茉理ちゃん。
茉理ちゃんが言っていたこと、間違ってなんかなかったね。

近づいてみたら、やっと自分の気持ちに気づいたよ。

わたし……ナツくんが好き。

もう、憧れて眺めているだけじゃ物足りない。

それぐらい早いスピードで、ナツくんへの想いが膨らんでいくんだ。

惹きつけられた、この一瞬から。
もう、ナツくんしか見えないよ――。