蓮の華よ、咲き誇れ


「信じるも信じないも貴方達次第。」



そう言って、立ち上がる。



「激動の時代を駆け抜けた誠を貫く剣士達よ、貴方達に1つ、教えてあげる。」



1人1人を見渡せば、全員がこちらを睨んでいた。



「貴方達はきっと私が必要となる。もし、私を今手放せば貴方達は」



ニッコリと微笑む。



私は知ってたの。



「桜のように散ってしまうから。」


こう言えば、貴方達は私を手放さないことを。



貴方達は何よりも仲間の命を大切にするって、分かってたの。



そのために私を利用するだけだってことも。



だから私もね、貴方達を利用する。



「お前に壬生浪士組に入隊することを命ずる。」



貴方達にこの命をかけてあげる。



私は、命をかける程大切なものを見つけるために。










150年後に伝わっている話とは、



違う貴方達を知るために。







〜蓮美side〜

めんどくさいなあと思いつつ、障子に手を掛ける。



「土方、入るよ。」



声を掛け、障子を開けた。



………………え?



「ちょっ、おい!」



土方が何か言ってるけど、無視。



それよりも



「汚い…。」


こっちの方が気になる。



床は書類と書物が散乱して、襖には布団がぐちゃぐちゃのまま半分だけが押し込められている。



机の上も使えなくなった筆や無くなった墨の殻等が投げ捨てられていた。



まさに地獄絵図。



よくこんな部屋で仕事が出来るものだ。



「…勝手に入った挙句、無視とはいい度胸してんなあ⁉︎」



「うるさい。だから、部屋も汚いんだ。」



「ああ⁉︎それとこれとは関係ねえだろ!」


ゴミなのかゴミじゃないのかよく分からない紙達に囲まれて言われても、怖くもなんともない。



不潔過ぎて顔を顰めてしまう程だ。



「私の役職は決まったの?」



だったら、無理矢理話を変えるに限る。



そっちの方が土方のプライドが多少は傷付かずに済むだろう。



「結局、無視か。」



さらにそれも無視。



すると流石に諦めたのか大きな溜息をついた。


「てめえの役職は決まってねえ。今、話あってる最中だ。」



そうだろうと思った。



私は女。



しかも、長州の間者かもしれないのだから。



でも、おそらくこの壬生浪士組で1番の強さを持っている。



束になってかかっても敵わない程の強さを。



「他に用件はないんだったら、とっとと帰れ。」




しっしっと虫を追い払うように手を振る。


「じゃあ、まだ帰れないんだ…。」



昨日の今日で役職を聞きに来る程馬鹿じゃない。



「用件あるから。」



ニッコリ笑うと土方は大袈裟に眉をよせた。



めんどくさいとでも思ってるんだろうけど。



一々あんたに通さないといけない私の方が面倒なんだよ。



昨日の話の後、私は条件をつけられた。



ここのきまりには従うこと。


男装して過ごすこと。



何かをするときは、副長の土方に通すこと。



などなど…。



何故か、私の方が立場が上のはずなのに命令をされた。



まあ、いざとなったら殺せばいいか。ということで大人しく従っている。



「で、用件っていうのはなんのことだ。」



「出掛けてくる。」



言ったからいいだろうと立ち上がる。