ふたりがいなくなってから、1ヶ月後。


予定日より少し早く、わたしは望を産んだ。


わたしの父と義母は、望の顔を見て喜んでくれたけど、だけど、心の奥では誰もが悲しみに沈んでいた。


誰よりもこの子の誕生を心待ちにしていたふたりが、いない。


そのことが、本来喜ぶべき場所に暗い影をさしていた。


「名前、決めたのか?」


気まずい空気を何とか繕おうと、父が明るく尋ねた。


「名前、“望”にしようと思うの」


夫も娘もいなくなった今、
この命だけが、最後の“希望”だと、

淡い願いを込めて━━━。


「“望”か。いい名前じゃないか」