彼の瞳は、いつも悲しそう。

・・・今だってそうだ。


あたしはそんな彼のことをもっと知りたくて、彼を見つめた。


「どうして?」

「俺がガキの頃、母親が死んじまってさ。親父は、海外で仕事してるから」

「一人暮らし、なの?」

「ああ・・・結構広めの一軒家だけど。たまに親戚が来るかな」



広い家で独りぼっち。

話したくても、話す人がいないんだ。



「だから、その犬が、家族」

「そっか・・・あたしもね?犬はいないけど、毎朝ワンちゃんと遊んでるんだ。飼い犬らしいんだけど」

あたしは、微笑む。


「へぇ・・・お前、面倒み良いのな」

彼は、ミーコを撫で続ける。


ほら、また。

優しく、微笑んでる。



『お前、面倒み良いのな』・・・か。
淡々とした口調で褒められてちょっと嬉しかった。

でも同時に、こんな感情も浮かんだ。


・・・あたし、決めた。


「ねえ、あたしが作ってあげるよ」

「は?」

彼は不思議そうにあたしを見た。


あたしはもう一度、微笑みながら言う。

「あなたの居場所。作ってあげる」