「怒られちゃったねぇ…」
「涼哉のせいで…」
「ケンでしょ」
自分は悪くないと半分いじけているのか、涼哉は口を尖らせている。子供っぽい仕草をたまに見せるから憎めない。
「あ、そうそう。ナっちゃん、どうだった?」
「やっぱりムカイの引き取りが嫌だって」
お風呂での話を少しした。涼哉は少し悩んだ後、『明日の朝、話してみるよ』と言った。
下手にわたしが言うより、涼哉の方が向いているのは確か。心強い言葉だった。
「うん。お願い」
「任せて♪じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
拳を軽く合わせた後、自分たちの部屋に入っていく。何故か隣同士の部屋。壁は薄いから、少し声を張れば聞こえてしまう。事実、涼哉の部屋からは音楽が聞こえてくる。言えば、『そんな大きくしてないんだけど…』と苦笑い。当然。壁が薄いんだから…。
「はぁ…、疲れた…」
怒られたということもあってか、ベッドに寝転ぶと疲れが押し寄せてきた。隣の部屋からもバフッと明らかにベッドに飛び込んだ音が…。
「ふふ…♪」
耳を澄ませば布団の擦れる音も聞こえてしまう。でも、今日はカーテンから覗く外の雨音がかき消していた。