わたしとリョーヤ…、涼哉は孤児だ。同じ孤児院に住む姉弟同然の幼馴染み。
鹿谷野孤児院。
わたしは、生まれてすぐ親に『預かっていてほしい』と言われて捨てられた。何歳になっても何歳になっても、親が迎えに来ることはなかったんだ。当時は『野村』という名字だったけれど、小学生の時『わたしを捨てた親の名字なんか嫌っ!』そう言って『鹿谷野』となった。

涼哉は、親を亡くして親戚の家から6歳の時にここに来た。小さい頃からあの飄々とした性格で、下の子からは好かれていた。涼哉も名字を変えるとか変えないとか言っていて、結局変えてはいない。『佐武』と言う親の名字のままだった。『サタケでもカヤノでも、俺はここの皆は家族だって思ってる。そりゃあ、何処かに引き取られたりはあるかもだけど、でも繋がってるよな』そんなことを言っていた。
『子供はやっぱり親の子供だから、子供時代はこの名字のままで生きてく』

「蕾、いいよ?」
「わかった」
「そうだ。母さんが、ナっちゃんと一緒に入ってくれって。何か顔色悪かったなぁ…。大丈夫かな?」
「さぁ?明日になってみないとわからない」