「つ…ぼみ?」
「はぁ…っ、はぁ…っ」
入り口で呼吸を整える。
振り返った彼は痩せているようで、月明かりが頬に影を作っていた。
どうして…。
「りょうや…っ」
名前を呼び一歩進むと、涼哉は外にまた顔を向けた。
何を考えているんだろう…。
「涼哉…?」
ベッドに近付き、手を握る。細い…。わたしを抱いた手じゃない。
涼哉は全てが細く痩せていた。
こめかみら辺にはガーゼが貼ってあり、中心は少し黒くなっている。たぶん…、血。
「涼哉…」
名前を呼んでも彼は、わたしに目を向けてくれない。ただジっと…、外を見るだけ。
「……兄ちゃん…、金がないって言ってたよ」
突然、涼哉は呟くように言い出した。
『兄ちゃん』とは、わたしたちと同じ孤児院に居た6歳上のタクヤと言う人だ。今はもう働いて、自分の生活費と孤児院の世話料としてお母さんに渡しているよう…。
でも、涼哉の言葉は…
「カノジョに持ってかれたんだってさ…」