今はそうでもないけれど、1時間前くらいは少し強めの雨が降っていた。
折り畳み傘に救われた訳だけど、涼哉は大丈夫かな…?
「あら、帰ってたのね」
「うん、ただいま」
様子を見にお母さんが入ってきた。テーブルの真ん中には、皆が作ったてるてる坊主が山になっている。正直、こんな要らないだろう。まず、かける場所がない。
「あららっ、こんなに作ってぇ…!土曜日は晴れね」
お母さんは大袈裟に驚いて見せた。皆は『えへへ』と笑っている。
わたしも1つ作って、山に乗せた。
「ふふっ♪」
お母さんがクスリと笑う。笑った理由は、わたしが作ったてるてる坊主。
皆が様々な顔を書く中、わたしのは誰かに似ている顔で。
小さい頃の癖になってしまったものだった。
涼哉に似た顔のてるてる坊主。

「涼哉は、まだなのね」
10時近くなった頃、お母さんは言った。弟妹は皆寝ている。わたしとお母さんは共有部屋にコーヒーを持ち、涼哉の帰りを待った。
「遅いね…」
夏になると涼哉はいつも遅くに帰ってくる。それも12時を過ぎた時間とか。そのため、涼哉には孤児院の合鍵が渡されていた。
「お母さん、もう寝たら?」
「もう少し、待つわ。蕾こそ、もう寝たらどう?」
「もう少し、待つ」
そんな会話をして、同時にコーヒーを口に含む。
少し甘めにしたコーヒーだ。