突風が吹いて傘が持っていかれそうになる。
「きゃ…っ」
「っ…!」
髪もスカートも激しく揺れて、目を閉じた時、傘を持つ手が何かに包まれた。
「危ないね。俺持つよ」
傘が再びわたしたちの上に戻ると、わたしは傘から手を離していた。
あの時、わたしの手を包んだのは紛れもなく涼哉の手。温かかったそれは、今は傘の柄の部分を包んでいる。
だらんと下がったわたしの手は、嫌に手の温かさを残していた。
「もうさっきの風で濡れちゃったね」
「うん…」
それでいなくても肩は傘から垂れる水で…。
「涼哉…?」
「ん?」
涼哉を見上げると、自分ばかり肩を濡らしてわたしを傘にスッポリと入れてくれていた。
「え?なに?」
黙ってしまったわたしを不思議そうに見てくる涼哉。
涼哉ってこんな紳士的な男だったかな…。
脳を巡らせて答えを探すわたしが居た。