別に好きなわけじゃない。
だけど怖かった。
「好きとかじゃないからね。」
「知ってるよ。」
ギュッと力を入れるとギュッと返してくれる。
好きなわけじゃないけれど早瀬君と抱き合うのはとても落ち着いた。
「そういえばなんでここにいたの?」
こんな人気のないところ本当に通りかかったんだろうか。
「それは…気にすんな。」
プイと顔をそらされる。
なによ、そんな言いたくないわけ?
そう思ってるとメールの着信音。
「あ、私だ。」
差出人は紗香。
そして内容はーー
【大学生の野上さん、大丈夫だった?
あの人結構強引って聞いたからさ。
一応、早瀬君にメールで『愛美が危険かもしれない。男に襲われてるかも…泣』って送っといたからね。
なにもないといいけど、早瀬君が来てくれたらそれは愛ね。別れなくてもいいと思うわ。】