少し寂れた街の、全く愛を知らない若者の話。
その若者は、身なりは普通の人間だが、魔法を使える若者だった。
魔法の国では、ある年齢に近づくと、魔法以外の事も必要なのだが、その若者は幼少時代に、父と母を無くし、最低限の愛を知らずに育った。
魔法の国では、愛が最も必要なものであり、そして愛が心を豊かにすると教えていたのだが、その若者は全くの劣等生で落ちこぼれ、教官から人間界に送られ、愛を知るまで、魔法の国に戻れなくなった。

人間界に来て、早4年の歳月が経った。
若者は、人を避け、ただ何をしていいか解らず、無駄な1日を送っていた。

ある日、自分の使える魔法を使ってみようと思い、使ってみたが、何も起こらない事に気付いた。
なんだ…使えないのか…
さすが落ちこぼれだな。
自分に愛想が尽きる。

仕方無い。
街に行こう。

この行動が、この若者の未来を決めるものだった。