気まずい沈黙の中。

「もしかしたら」

倉本がハンドルを握ったまま、美奈に語り掛ける。

「君が言っていた犬吠村の都市伝説の基は、彼女達バスソルト中毒者なのかもしれないな」

この辺りの旧道の一部はダムの建設により沈み、不法投棄や暴走族の溜まり場となったりするなどの問題が発生したという。

都市伝説が流布し始めたのと、溜まり場になり始めたのと、どちらが先なのかは分からない。

しかし、この辺りを溜まり場としていた連中が、ここでバスソルトを摂取して中毒者となり、正気を失って周辺を徘徊するようになった。

それを後から訪れた者が目撃し、実際に襲撃された事で犬吠峠の都市伝説が生まれたのではないか。

「歌舞伎町で蔓延するよりも前から、この周辺にはバスソルト中毒者がいたって事…?」

「仮説だがな」

美奈の問いかけに倉本は頷いた。