その日は風邪を装っていたので、怪しまれないようにずっと寝ていた。


気が付いたらもう夕方になっていて、大きな窓の外は、オレンジ色に染まっている。


もう夕方か…。ってことは怜馬が帰ってくる。


涼馬は今日夜中まで大学にいるって言ってた。


頭のすみっこでは、やっぱりみぃちゃんの存在が気になった。


‘みぃちゃん’…いったいどういう人なんだろ…。


私はむくりと起き上がり、怜馬たちが帰ってくる前にトイレに行くことにした。


ドアを開けたそのときだ。


ドンッと誰かにぶつかり、私もその人もしりもちをつく。


「いたた…」


腰をぶつけてゆっくりぶつかった人を見ると、そこには猫目でショートカットの女の子がいた。


私と同じで腰をぶつけて痛がっている。


「ご、ごめんなさい!大丈夫…ですか?」


私が先に起き上がりその女の子に手を差し伸べた。


すると、女の子はニッと笑って私の手をつかんで起き上がった。


「わりぃわりぃ。ありがとな。綾那!」


「なんで私の名前…」


私は驚いてその人を見上げる。私より10センチほど背が高い。


その人は私をちょっと見つめてきた。


「な、なんでしょう…」


女の子ははははっと笑った。


「なんでさっきからそんな敬語なんだよ?私たち友達なんだからよ。久しぶりに会ったからってそんな他人行儀になるなよー」


「友…達…?」


私はその人にぐっと顔を近づける。


「もしかして、みぃちゃんさん?!」


すると、その女の子は「へ?」という顔をした。