告白イベントの会場に着くと、辺りにはちらほらとカップルの姿があった。
ハートのイルミネーションがピンク色に光り輝いている。

モニターには会場にいる人々が映り、司会の人が「No.29番の方お願いします」 と言ってるのが聞こえた。



あれ?あの司会の人って、前にG組の教室にいた謎の男性だよね?
あの時はスーツ姿だったから気付かなかったけど、やっぱり間違いじゃない。

でも何でここにいるの…?



それより今は悠真を捜さなきゃ!!

私は一人一人の顔の確認をしていると、急に私に向けられたスポットライト。

周りのお客さんが"キャー"と言って拍手している。

そこで私は顔を上げ、ステージに目を向けた。


その先には悠真の姿があった。


正装な衣服を身に纏い、司会者の質問にマイクを持って答えてる。


「美莉亜、俺の声ちゃんと届いてますか?」


悠真と目が合った瞬間、私は深く頷いた。


「あ、あ、あ
マイクテスト。

では聴いてください!
今よりもっと輝く」


メロディーがかかり、悠真がリズムを取りながら歌っていく。
まるで歌手みたいに、歌詞と悠真の歌声が私の頭の中に入っていく。


素敵な曲に、私はうっとりしていた。

約4分近く歌い切った悠真に向かって、お客さんが盛大な拍手をした。


「かっこよかったぞー!!」
「がんばれー!」

とお客さんが声を上げている。


「深瀬悠真さんの彼女さん、ステージに上がって下さい」


司会者の方にそう言われ、私はドキドキしながら無我夢中でステージに上がっていた。


「先ずは、彼氏さんの歌声いかがでしたか?」


「かっこよかったです」


"ふぅー"とお客さんや司会者の方が、やけに煽る。

恥ずかしいなー。

悠真も照れくさそうに、頬をかいている。


「美莉亜、俺…六年前から美莉亜のことがずっと好きだった
再会したのは、きっと運命だと思ってる

これからも、俺の傍にいてくれますか?

美莉亜を愛してます」


膝まづいた悠真が、私の右手薬指に指輪をはめてくれた。


「はい!私も悠真を愛しています」



私の返事を聞いた悠真が、私を優しく抱き締めた。
私もそっと悠真の気持ちに応えていく。



「おめでとうございます!カップル成立です!」


熱い声援に応えるように、私達はお客さんにお辞儀していく。
何だか有名人になった気分。


火照った体も寒さで次第に和らぎ、悠真と一緒に恋花音の木に向かった。


「まさか来てくれるとは思わなかった」


「そりゃ、ね
悠真のこと好きだもん!」



「あの後、あの人とはどうなったの?」


「しっかり別れを告げてきたよ
私には大切な人がいるって、ちゃんと伝えてきた!」


「そっか!そりゃ良かった
美莉亜ー」


「何?」


「ただ名前呼んだだけ!」


「もう~悠真ったら!
そういえば私も、悠真に聞きたいことがあるんだ…」


「何?」


「さっき私達と喋ってた司会者って、前にG組の教室にいた人だよね?気付いてた?」


「向こうも気付いてたよ。
誠人がどうやらその人に頼んでたみたい

誠人って結構根は優しいんだけど、その分責任感が強かったのかもなー…」


「そうなんだ!篠塚くんが私達の為にしてくれていたんだね」


「まあ、これも全てあの告白チケットのおかげだな!
俺、あの人に背中押されなかったら、前に進めていなかったよ

多分だけど…。
でも今は美莉亜が傍にいて、すっごく幸せ」


「私も悠真と同じ気持ちだよ!」




晴れて恋人になった私達。
他愛のない会話が、こんなにも幸せだと思わなかった。

悠真と肩を抱き寄せながら、恋花音の木の下に着くと…


辺りには誰もいなく、クリスマスソングだけが、BGMとして流れている。

そりゃまだイベント中だもんね!


私達は恋花音の木に向かって、深く手を合わせた。


これからもずっと、悠真と一緒にいれますように!!


「美莉亜は何お願いしたの?」


「内緒!」


「可愛くないなー

ウソ、すっごく可愛いよ!」


私の頬をプニプニしてきた悠真が、とっさに私の目を見つめては、私の唇にキスを落とす。


「これからもずっと一緒にいような」


「うん!」


私達は手を繋ぎ、恋花音の木を後にした。