「あなた、誰?
本当に藤木くんなの?」


私は訳が分からなくなり、自分で可笑しな事を藤木くんに問い訊ねていた。


「俺が藤木じゃなかったら、俺は誰だって言いたいの?」


藤木くんは冷めきった口調で、そう放った。



「それは
偽りの藤木くんだよ…」


「何言ってんの?
訳わかんねぇ…
俺は俺だから、勘違いするな!

それと、ここまででいいよ
風邪引くと困るのはミルクだからな」


そう言った藤木くんは私の首にマフラーを巻いて、一人何かを食いしばるように走り去ってしまった。


これが全て藤木くんの優しさだと気づくまで、そう日は長くない。



誰かを幸せにすることは、時には冷たくなったり、嘘をつくことがあるかもしれない。



でもそれは、誰かを守ろうとしている一理でもあるよね?





私はそのことに気づけていなかっただけなんだ…。