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エレベーターを下りると、人目をはばからず、その後も私達は走りに走った。

ようやくタクシー乗り場に着くと、私達はタクシーに乗り込み、悠真が行き場所を告げタクシーが発車する。


一安心した私は、大きく車中で深呼吸をした。


「悠真、ここから由紀さんの家まで、どのくらいで着く?」


「由紀、前に引っ越したって言ってたから、ここからだと車で30分以上かかるな…」


「そうなんだ…
二人とも無事だといいね!」


「それはどうだろ?
由紀は自殺をしようとしていたこともあったし、もし誠人がその話を由紀に打ち明けていたとしたら、由紀はその話を呑み込むと思う」


「そうだったんだ…
由紀さんって、か弱い人なんだね・・・」


「あの二人をそうさせたのは、全て俺のせいなんだ…

六年前、俺達が絶交する前…
俺がちゃんと由紀を守っていれさえすれば、こんなことにはならなかった

俺はずっと酷く後悔してる

いくらあの二人に謝っても、許されるべきではない

絶対にこのことを忘れてはいけないんだ!
だから、俺があの二人を救わなきゃ…

俺はもうどうなってもいいから」


悠真は強く拳を握りしめると、片方の手の平に叩きつけた。



「バカなこと言わないで!
悠真がいなくなったら残された私は、どうすればいいの?」


「その時はちゃんと、俺が空の上から美莉亜を見守っているよ」


悲しそうにそう私に言った悠真は、私の手を強く握った。

悠真は本音で言ってるつもりじゃない。


あの悲しい瞳、理科室でキスされた時と同じ表情だ。