ゆずきがリュウにそう言われ、リュウのハンカチで涙を優しく拭うと、ゆずきはそのまま黙り込んでしまった。

それを目の前で見ていた私は、気を利かせるようにその場から立ち去ろうと思ったが、いても立ってもいられなくなり、リュウに声を掛ける。



「リュウ、さっきから何してるの?
辺りをウロウロなんかしちゃって…

ゆずきの気持ち分かってるんだよね?」



私がそう問うと、リュウはその場で立ち止まり、少し右斜め下に俯く。

私に不意を突かれて、きっと我に返ったんだ。




「何もしてねーよ!
俺なんかのことを好きになってくれている人の気持ち、俺、考えてもみなかった

だから俺、今すっごく不安だし、悩んでる

美莉亜みたいに、ゆずきまで傷つけたくねぇんだ…」


「リュウ………」


「だからゆずき、答えを出すまで少し時間をくれないか?

俺、まだ美莉亜のことが忘れられないんだ…

そんな気持ちのまま、ゆずきとは付き合えない

ごめん・・・」


「中島くん、そうだと思ってた
まだ美莉亜のことが好きだって…

私はいくら時間がかかってもいい

ゆっくりでいいから、私に振り向いて!

私は中島くんが振り向いてくれるまで、いくらでも待ってるよ!

だって、私の愛する人だから」


「ゆずきありがとう!
俺、すっごく嬉しいよ!
これも美莉亜がいたお陰だな

美莉亜、美莉亜も恋頑張れよ!俺応援してっから!!」


「私はそういうつもりじゃないよー
ただ、リュウとゆずきはお似合いだし、二人には幸せになってもらいたかったの!!

じゃあ私そろそろ行かなきゃ!

リュウ、幸せになれよ♪」


「美莉亜もな!
じゃあゆずき、俺達もそろそろ行くか!
立ち話より、ずっと良いことしようぜっ」


「リュウ、あんたバカか!
ゆずきを泣かせたら親友の私が承知しないんだから

ほらっ、さっさと行った行った」



私は軽くあしらうように、二人の背中を後押ししてあげた。

本当は前に進んでもらう為に、背中を押しただけなんだけどね!


私の気持ちが二人に届いたのか、ゆずきとリュウは私の方を振り向いて手を振ると…

少し緊迫して、ぎこちなくなりながらも手を繋いだ。

パチッって一瞬聞こえたけど、あれは何?

静電気??


静電気が二人を今電流を流して結びつけたんだ。

きっとそうであって欲しい!と 私はそう刹那に願う。



リュウに恋を応援されるのは一ミリも思ってもいなかったし、少しばかり照れくさいけど…

私もリュウみたいに頑張らなくちゃ!

悠真とちゃんと向き合わなくちゃ!



私の心の中に新たに芽生えた強い執念。

その気持ちを壊さないように、ゆっくりと前に突き進むと決めた。



それから私もゆっくりと、新たな道へと歩き始める。