「つか、お前知ってたんだな」
「何を」
「あいつのこと」
「ああ、七瀬さん」
「そう。その“七瀬さん”」
「去年の夏、理事長が教えてくれたから」
「ばぁちゃんもグルだったのか」
「理事長はただ面白い事が好きなだけ」
「…まぁ、そうだな」
彼女が、東雲であったからこそ。
今こうして、こいつがこの家にいるのだけれど。
「じゃあ、行くわ」
「……すまねぇな」
「そう思ってるんなら、さっさと行動でろ」
「わかってるよ…」
「珍しく弱気だな」
「色々物申したいけど、言えないからな」
「あっそ」
こいつもそろそろいい加減、鬱憤が溜まってきてるんだろう。
当事者であるのに、家族会に口出しすることも、参加することすらできない。
「はぁ…」
代わりに俺が出る羽目になったんだけど。