そんなことを考えて自傷的に笑う。
すると、「おい」と声をかけられた。
私はすぐに声の主が分かった。
大好きな人の声を忘れるはずがない。
「陸………」
「なに、今の。俺に言った?」
すごく不機嫌そうなオーラを出している目の前の陸は私を邪魔なものを見るかのような目で睨み付けた。
今まででこんな目で睨みつけられたのは初めてだ…。
「聞いてんのか?」
「え……??」
傷心していて陸の声に気づかなかった。
「えっ……と……」
私があたふたしていると禀ちゃんがズイッと入って言う。
「そうだよ、あんたに言ったの。
本当のことを言ったまでよ。
あんた、彼女の莉李亜を無視して他の女とイチャイチャして馬鹿じゃないの?
莉李亜の気持ちも考えたら?」
するとすぐさま陸の回りにいる女子が反論してきた。
「はぁ!?あんた陸様にむかって何言ってんの!?」
「へぇ~。その莉李亜って子、彼女だったのぉ?
似合わなぁい」
「そぉよ!あんたが可愛くないから陸樣にも相手にされないんでしょぉ?」
「身の程知らずのバカねぇ」
クスクス
みんなの言葉が胸に刺さる
でも、みんながいってることは本当のことだ。
いつも禀ちゃんがいないとクラスメイトともあんまり話せないし……
「は!?
あんたたち、それ以上言うと……」
「いいの!禀ちゃん。
みんなが言っていることは全部本当だから。」
「でも………」
凛ちゃんはまだ納得いかないようだったけど、我慢してくれたみたいだ。
自分でそうは言ったもののやっぱり傷つくなぁ。
じわ…と、涙が滲む。
そんな私を見て禀ちゃんが気を使って「屋上……いく?」
と聞いてくれた。
そうだなぁ。また泣いちゃいそうだし…
「うん!行こ♪」
私は無理に明るく振る舞って禀ちゃんと教室を出た。
この時に悲しそうな目で陸が見ているとも知らずに………。
~陸sied~
「うん、行こ♪」
無理に笑顔を作った莉李亜が教室を出ていく後ろ姿を無言で見送る。
俺は、莉李亜の彼氏失格だな。
本当は、 莉李唖以外の女と話したくもねぇ。
だけど……
莉李唖が俺のことを本当に好きなのか、不安で、いつも他の女と遊んでいる。
あいつがこっそり流す涙を見ると、
俺のことをまだ好きでいてくれてるって自信が湧く。
こんなことしちゃいけないって心の中ではわかってるんだ。
なのに、俺が弱いから莉李唖を不安にさせて毎日毎日泣かせて。
本当に俺、最低だ……
だってあいつは、天然でおっとりしていて誰にでも優しい。
このクラスの男たちが莉李唖を目で追っているのをあいつは全然気づいていない
いつ他の男に取られるか気が気きでないんだ。
だからいつも好きでもない女達と一緒に居て俺のことをまだちゃんと好きかどうか確かめている。
でも、こんなことしていたらいつかきっと本当に莉李唖に嫌われてしまう。
分かっていてもやめることが出来ない。
こんな自分、大嫌いだ
~陸sied end~
~莉季亜 sied~
はぁ…………
結局、逃げるように出てきちゃったなぁ
「莉季亜、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ!」
みんなに陸と不釣り合いだと、言われたことがショックだった。
心の中では分かってたんだ。
みんなから文句を言われることを………
だけど、やっぱり私は弱いからこんなに簡単に傷ついちゃう。
「莉季亜。無理しないで言いたいこといっていいんだよ。
泣きたくなったら泣いていいんだよ?
どうせ、莉季亜のことだからあいつと不釣り合いだって言われて傷ついて、泣きそうになってる自分を攻めてるんでしょ。」
なんで、凛ちゃんにはなんでもわかっちゃうのかな?
「傷ついたら泣いていいんだよ。
人は傷ついて成長していくんだから。
傷つくのが当たり前なんだよ、莉季亜。
だから、我慢しないで感情を出しな。」
優しく、落ち着かせるようにゆっくりと話す凛ちゃんのことばで私の涙腺はプチンと音を立てて切れた。
「ぅ……ふぇ………りっ…りんちゃっ……ん
嫌だったよ…陸とっ……似合わないって言われるのも………泣くのを……我慢するのもっ……」
「うん。よく我慢したね。
莉季亜はよく頑張って耐えたよ。
もう、いいよ。
もう耐えなくていい……」
………………………………………
「んっ……ぁ……れ?」
なんで私たち屋上にいるんだっけ…?
寝起きの頭で考える。
あ、凛ちゃんが我慢しなくていいって言ってくれて泣いちゃって、そのまま寝ちゃったんだ!
今何時!?
「5時………3時間くらい寝てた……
り、凛ちゃん!起きてっ
もう5時だよ~っ!」
「ん……おはよ……って5時!?
うわぁ、莉季亜の寝顔見てたら私も寝ちゃった!
もぉ~、莉季亜が泣きつかれて寝ちゃうか…」
「ご、ごめんね……」
「ふふっ
冗談だよ。
てゆーか私たち、午後の授業全部サボったね!
私、サボったの初めてだよー!」
「ふはっ
私も初めてだよ!!」
そう言って2人で笑いあった。
ひとしきりの笑いが収まった時、私は凛ちゃんに今、心に決めたことを話そうと思い、口を開いた。
「あのね、凛ちゃん。
私、決めたことがあるの。
明日、私と陸が付き合った記念日なの
だから……明日、陸に話をデートに誘ってみる。
記念日のことを覚えていたらまだ、陸のこと諦めない。
だけど、覚えていなかったら…私、陸を諦める。」
「そっか………
莉季亜が決めたことなら私は応援するよ。
頑張ってね!明日!」
「うんっ
ありがとう、凛ちゃん!」
全ては明日に掛かっている。
どうか陸が………記念日を覚えていますように。
そんな願いを込めながらベットで眠りについた。