―――…


「南君て中学の時、ほんとに彼女いなかったの?」


あたしが問いかけたのは、美帆(ミホ)

入学して以来、もう何年も友達だったかの様にすっかり親友になったあたし達。


そして偶然にも南君とは同中だったという美帆は、彼の情報をわんさか持ってきてくれる。


こんな音楽が好きらしいとか。

こんな食べ物が好きらしいとか。

"らしい"ってとこが、また微妙なんだけど。


でも、そのおかげで他の子が知り得ない情報も少なくないと思う。


「まず、聞いたことないんだよ。南が誰かを好きとか」


何度聞いても返ってくるのはこの答え。


「ふーん。やっぱり女ギライ…かなぁ…」


合格圏に達してないなんて言ってたけど。


手にした紙パックのコーヒー牛乳を弄びながら、やはりそういうことなのかと結論付ける。