そのまま家にも帰らずに、渚さんたちの溜まり場となっている喫茶店に走った。




あったかい珈琲を淹れてくれて、それが苦くて涙が零れた。



泣いている私を見ても、誰も何も言わなかった。

ただそばに集まって、頭を撫でてくれた。




落ち着いてから、一言だけ言った。


「失恋した。好きになった男にはね、女がいた。キスしてるの、見ちゃった。えへへ。ダサいよね。」


誰だそいつブチ殺すといきり立つみんなをなだめ、渚さんが言った。


「パーッとやって忘れようぜ。よみを女前にすんぞ。」



それから私の髪を脱色し、化粧を教えてくれた。


鏡で見た自分の姿はまるで別人で、生まれ変わった気分だった。



そのあと太陽さんに連れられて、改造屋と呼ばれる店で制服を改造した。


スカートは3倍、セーラーは2分の1の長さになった。


それからいろんなことを覚えた。


バイクを借りて練習し、1週間で運転できるようになった。


タバコを覚え、新しい特攻服も作ってもらった。



夜は警察に追われながら走って逃げて、また暴走して。






そんなことをしていたら、失恋の痛みなんて

どこかに飛んで行って消えていた。







ごちゃごちゃ考えること自体が馬鹿らしい。



もう、学校なんてどうでもよかった。