「あんな。俺、よみに彼氏がおったって聞いて、やけになっとってな。前から告白されてた先輩がおったんやけど。修学旅行もな、よみと一緒に過ごせる思ってめっちゃいろいろ準備しとってん。けどな。よみは来んかって。もうどうでもよくなって、その先輩の告白okした。」



辛そうな顔をしないでほしい。


お前なんか遊びやでって笑ってくれた方が、まだよかった。




「あたし、彼氏なんていたことないよ。」


「嘘や。1年の終わり頃、5組の岸田と付き合ってるって本人から聞いたけど。」


「……告白されたよ。でも付き合ってない。」


「……マジかよ…クソ…」



岸田がそんな嘘をついた理由もよくわからないけど、今はそんなのどうでもいい。



「なんで、なんであたしに好きって言ったの。」


「よみが好きやから。」


「そんなの!彼女がいるのに?」


「別れようとしたよ!何回もな。けど…受験で今は考えたくない。卒業まででえぇから彼氏でいてって。そんなん言われたら、先輩やし、俺がやけくそでokしちゃったんやし、何も言えんかった。」



だったら。そんな理由なら。


「卒業してからあたしに好きって言ったらよかったじゃん。なんで…なんでそんな時期に…」


「今言わなよみは他の男にとられるって思ったからや。」



そんな理由…そんなの…


「バカじゃないの…」


「ごめんな。よみ。ごめんけど、好きや」



堪えていた涙がとうとう零れた。




悔しいけど、愛しくてたまらない。

悔しいけど、こんな男を私は愛してしまった。



「卒業したら、ちゃんともう一回告白する。せやから、それまで待っとって。わがままなんは分かっとる。でも他の男のもんにならんとって。お願い…よみ。」



ぎゅっと抱きしめられて、最低だと思いたかった。



でも、もう遅すぎた。



私はこいつを好きになりすぎていた。





「分かった…」


優しいキスに、また泣いた。



あと半年。私はたぶん、こいつを信じて待つのだろう。