結局柊の機嫌は昼休みまで直らなかった。


用事があって声をかけてきた学級委員にもシカトして、怒りオーラをムンムンに漂わせていた。




「さや、修学旅行で柊なんかあったの?」

昼休みの中庭で、鯉の池にパンを投げ入れながら聞いてみた。


「あー…なんかずっと機嫌悪かったんだ。沖縄でも。空港で担任になんで藤沢いねーのに行くんだって食ってかかって、山口先生に一喝されて、それからなんか、ずーっとあの調子。」


「そうなの…あたしがいなきゃなんかまずかったのかな?グループ分けとか人数狂った?」

「あーそういえば、グループ分ける班は全部よみ、柊と同じとこだったから。」

「そうなの?」

「うん。男子と女子の組み合わせはくじ引きだから偶然かもしれないんだけど。柊ってよみ以外の女子とあんまり喋らないじゃん?だから寂しかったんじゃない?」

「寂しかった?あはは、あり得ないよ。多分サボり魔なのが気にくわないだけだろうな。」


「うーん。そうかなぁ。」



それから話はさやかの思い出話になった。


首里城が意外と小さかったとか、戦争の慰霊碑に胸が痛んだとか、海がびっくりするぐらい綺麗だったとか、夜はこっそり葉山の部屋にもぐりこんだとか。




さやかの楽しそうな顔をみていると、私まで楽しくなる。


さやかは笑って、大人になったら2人で沖縄に行こうと言ってくれた。



詳しくは私の事情を探らない。でもきっと、何かを察している。


さやかは優しい。私にはもったいないくらい、どうしようもなく心が綺麗で、澄んでいる。