ふたり並んで地面にしゃがみ込み、線香花火に火をつける。
小さくパチパチと光る線香花火を見つめた。
「色羽のお父さん、そろそろ帰ってくるかなぁ?」
隣で線香花火を見つめながら華が呟く。
「まだ9時半だろ?こんなに早く帰ってこねぇよ」
「あいかわらず仕事、忙しいんだね」
「さぁな。本当に仕事なのかもわかんねーし。つーか俺のことなんて、ほったらかしだし」
「色羽がお父さんのこと、そんなふうに言うの珍しいね」
「……そーだな。言ってみただけ」
「色羽……」
「そんな顔すんなって。ブタ華」
「あーひどっ」
「アハハッ」
母ちゃんが死んでから、もう10年以上の月日が流れた……。
あれから、この家で父ちゃんとふたりきりで暮らしてきた。
けど、父ちゃんと過ごした記憶なんて、ほとんどない。
仕事の付き合いとか言って、酒飲んで帰ってくるのはいつも夜中だった。
俺のことは華の親にまかせっきりで、小さい頃も遊んでもらった記憶はない。
授業参観や運動会、学校の行事はいつも仕事だっていって、一度も来てくれなかった。
別に寂しいとか、悲しいとかそんなんじゃない。
生きていくために、毎日必死に働いてくれていることもわかってる。
それでも時々思う。
俺のことを、父ちゃんはどう思ってるんだろうって。