縁側に置いてある蚊取り線香のにおいと煙が夜風に乗って漂ってくる。
庭にしゃがみ込んで、うつむいたままの華を俺は見つめていた。
胸が締め付けられる思いだった。
成が西内のところに行ってしまったのが、そんなに悲しいなんて……。
せっかく今日は、楽しそうだったのにな。
俺じゃダメなのか?
成がいなくちゃダメなのかよ……華……。
「華、線香花火やろーぜ」
顔を上げた華は、俺にニコッと笑ってみせた。
「うん」
「対決な」
「いーよっ!負けたらどーするっ?」
「華が決めろ」
「うーんとねぇ……じゃーデコピン?」
「えー。華のデコピン痛いからやだ」
「ふふっ。あたしが決めていいって言ったじゃん」
ムリして明るく振舞う華も。
華の気持ちも。
全部わかってるよ。
そんな華を見て胸が痛むけど、こんな痛みくらい耐えてやる。
俺は、華のことが好きだから。
だから、絶対に俺は諦めない。