たくさんあった花火も、少なくなってきた頃。
「そろそろ線香花火対決にしますかね~」
そう言って成が、線香花火を取ろうとした瞬間、成のケータイが鳴る。
成はケータイを服のポケットから取り出し、しばらく画面を見つめていた。
「メール?」
そう華が聞くと、成はケータイをズボンのポケットにしまった。
「ごめん、線香花火対決は色羽と華でやって。ちょっと行くところができた」
「砂歩のとこ?」
華が聞くと、成は笑顔で頷く。
「うん。バイトでなんかあったみたいだからさ。いってくる」
一瞬、悲しい顔をした華を、俺は見逃さなかった。
「じゃ抜けるわ~」
「おぉ」
成が手を振り、俺も右手をあげる。
帰っていく成の後ろ姿を見つめる華。
華の寂しそうな顔に、俺は手を伸ばしかけるけど、拳をぎゅっと握りしめて手を下ろした。