「うーん。熱はないよなぁ?具合でも悪い?」



あたしは首を横に振る。



「元気だってばっ」



「じゃあ、なんかあった?」



「……なにもないよ」



色羽は顔を近づけてきて、あたしの瞳を真っ直ぐに見つめる。



「華がウソついても俺、わかるし……」



色羽は、あたしが平気なフリをしても、そうやって簡単に見抜くんだね。



あたしやっぱり、うまく笑えてないんだ。



いまは、ひとりでいたい。



ごめんね、色羽。



「あたし、行くねっ」



「華」



あたしが歩き出すと、色羽は後ろからあたしの左腕を掴んだ。



「なに?離して?」



色羽から視線を逸らして言った。



「……トイレ行きたいのっ!」



「あぁ……そう。わりぃ」



色羽は、あたしの腕をそっと離した。



あたしは廊下を走っていく。



途中で後ろを振り向くと、



色羽が心配そうな顔で、あたしを見てた。