波打ち際で、成と彩葉が遊んでいるのを、あたしは砂浜に座って見つめていた。



ねぇ、色羽……。



あの時、色羽は言ってたね。



なんでお母さんは自分を生んだんだろうって。



体が弱かったのに、無理してでも自分を生んで。



苦しんで死んでいったって。



色羽はお母さんに申し訳なく思ってた。



でもね、あの時。



あたしが言ったことは、やっぱり間違いじゃなかった。



愛したかったからお母さんは色羽のこと生んだんだよ。



いまのあたしは、お母さんの気持ち、すごくわかるんだ。



あたしもお母さんになったから。



言葉に出来ないほど、いとおしい存在。



この子を守るためなら、どんなことだってする。



必要ならば、自分の命だって差し出せる。



かけがえのない愛すべき存在だってこと。



色羽のお母さんも、いまのあたしと同じような気持ちで、



色羽と色羽のお父さんを見てたんだと思うよ。



色羽……。



そっちでお母さんに会えた……?



あたしは空を見上げて微笑んだ。



目を閉じると、君の声が聞こえる。



『いま、幸せか?』



うん。



幸せだよ。



『よかった。おまえらが幸せで、俺も幸せだ』



目を開けると、真っ青な空。



すごく綺麗だった。