必死に走って、足はもうクタクタで。
息が切れて肩が上下する。
家の近くの原っぱが見えてきたところで、あたしは立ち止まり、膝を押さえた。
草が生い茂る原っぱ。そこに成の姿は見えない。
やっぱり、そうだよね……。
もう、とっくに約束の時間は過ぎてる……。
メールは返さないし、ケータイの充電は切れて繋がらないし、何も知らない成は、ここで待っててくれたとしても、きっと呆れて帰っちゃったよね。
――ザッ、ザッ。
あたしは原っぱの中を歩いていく。
ずいぶん草も背が伸びたな。あたしの腰よりも上まである。
成の実家に寄ってみようか。
実家にいなかったら、成が暮らしている家に行ってみようか。
でも成の彼女が家に遊びにきてたりしたら……。
――ガサッ。
「華……?」
声の方を見つめると、草の中でしゃがみ込んでいた成が、少し離れた先に見えた。
成は立ち上がり、あたしを見つめて微笑む。
「成……」
「久しぶりだな、華」
成がいた……ここで待っててくれた……。
「うん……久しぶり」
胸の奥からこみあげてくる涙。
来るかどうか、わからないあたしを。
約束の時間を過ぎても。
成は待っていてくれた。