電車が地元の駅に着いたのは、夜8時前だった。
真っ暗で、誰もいない駅のホームに降り立つ。
この町の匂いに、地元に帰ってきたんだなと実感する。
改札を出ると、すぐにバス停がある。
「さすがにまだバスの最終あるよね?」
田舎町だから、バスは1時間に1本くればいいほうだ。最終バスの時刻も早い。
あたしは街灯の明かりで、バス停にある時刻表を見る。
「げっ!次のバス、1時間半後とか……」
辺りはしんと静まりかえっている。
タクシーなんか当然通りかかるわけない。
ここから実家までの距離は、だいたい5、6キロくらいだろうか。
下を向きそうになったけど、夢の中で色羽に言われた言葉を思い出して、すぐに夜空を見上げた。
夜空に散りばめられた星屑が綺麗だった。
気づけば、走り出していた。
夜空の下、
成の元へと
必死に走っていく。
会いたい。
会いたいよ。
涙が溢れてくる。
「会いたいよ……成……っ」
約束の時間は、もうとっくに過ぎてしまった。
成はあたしが帰ってくるかどうかも知らない。
メールも返してないし、最初から、あたしのことを待っていないかもしれない。
それとも、原っぱに来てはみたけど、約束の時間になっても現れないあたしに、
成は待ちくたびれて帰ってしまったかもしれない。
もう、そこにはいないかもしれない。
それでも。
あたしは行かなきゃ。
もう決めたから。
伝えたいことがある。
成に会って。
もう手遅れだとしても、
いまちゃんと、自分の気持ちを伝える。
もう二度と、逃げたりしない。
逃げずに前を向く。
前を向くよ。