アパートを出て、バス停まで必死に走っていく。
「ハァッ……ハァッ……」
伝えなきゃ。
いまのあたしの気持ち……。
ずっと逃げてきた。
色羽を忘れるのが怖くて。
思い出にしたくなかった。
成への気持ちを消したかった。
初恋は終わりにしたかった。
だけどもう、
あんな思いはしたくない。
伝えたいときに伝えられなかった気持ち。
明日が来るかなんて、わからない。
今日を大切にしなくちゃ。
いまを。この瞬間を。
無駄にしたらダメなんだ。
もう二度とあんなふうに後悔したくないっ。
――ブォォォン……。
「待ってーっ!」
バス停が見えてきたところで、ちょうどバスが走り去っていくところだった。
必死にバスのあとを追いかけていくけど、スピードを上げていくバスに追いつくはずもなく、息を切らしてその場にしゃがみこむ。
「次のバスいつよぉ……」
あたしは下を向いた。
けれど、すぐに空を見上げた。
『つらくても下なんか向くな。空を見ろ』
夢の中で色羽が言っていた言葉を思い出した。
『そしたら俺が、おまえに元気をあげるから』
色羽の言葉が、いまのあたしを動かしてる。
「これくらいで、あきらめちゃダメだよね?」
あたしは空に微笑んで、立ち上がった。