あたしは、成が持ってきたお菓子を食べながら、再び机にむかって勉強を始めた。
日本史の教科書を読みながら、ノートに重要な部分を書きこんでいく。
どうしよ。全然、覚えられない……。このままじゃヤバいよぉ……。
あたしはノートの上にペンを置き、深くため息をつく。
「なぁ……色羽のやつ、まだバスケしてんのかな?」
成が床に寝そべったまま、あたしに話しかける。
「そーじゃない?そろそろ帰ってくるでしょ」
色羽は、高校の男子バスケ部に入っている。
部活がない日でも、よく高校の近くにある総合運動公園で、
夜遅くまで、ひとりシュートの練習をしたり、数人の部員たちとバスケをしたりしている。
あたしはふたりみたいに、バイトしたり、部活に入ってるわけじゃない。
テスト前も十分に勉強する時間はあるのに、なぜか色羽や成よりも成績が悪い。
本当に嫌になる。
だから今回の期末テストは、頑張らないといけない。
「ハハッ」
「なによ?成」
「もうお菓子、食い終わったのかよ~。早くねっ?」
「なっ……頭使うとお腹が減るのよ、あたしは!」
「夜なのに、そんなに一気に食ったら太っちゃうよ?やべ……想像しちゃった、ブタ華」
「ブタ華って……ひどっ!成のバカッ」
あたしは、床に寝そべっている成の上に乗っかり、拳で背中を叩きまくる。
「痛いじゃんかぁ、華っ……やめろって……」
「お菓子持ってきたの成でしょーが」
「やめろって……華……うわっ」
「ごめんなさいはー?」
今度はふざけて、成の横っ腹や足の裏をくすぐり始めた。
「ふふっ……こしょこしょ~」
「やめろっ……華……アハハッ……ギブ、ギブ~」
その時、成があたしの手首を掴んだまま、あたしの体を床に倒した。
あたしの上に、成が覆いかぶさっている。