目を開けると、目の前に色羽がいた。
あたし……色羽の夢を見てるんだ。
夢の中でもちゃんと、
あたしは、色羽が死んだってことをわかってるんだな。
だって色羽は、あの頃のままだから。
18歳の時の色羽のままだから。
『華……いま幸せか?』
色羽の言葉にあたしは小さくうなずく。
『心から笑ってるか?』
あたしはもう一度うなずく。
『俺に嘘なんてつくなよ』
嘘なんてついてないよ。
『素直になれ』
色羽……。
『俺が手紙に書いたこと、もう忘れたのかよ?』
忘れてないけど、でも……。
『華、俺は華のことずっと好きだよ』
色羽の笑顔は、あの頃のままだね。
『忘れていいんだよ、華』
やだよ。忘れるのが怖い。
忘れたくない。
『人は忘れていくものなんだよ』
やだよ。
『俺がちゃんと覚えてるから』
あたしも覚えていたい。
忘れるなんてやだよ。
色羽のこと、忘れたくないよ。
『忘れてもいいんだよ。それでも大切なものはちゃんと残っていくから。それが思い出だろ?』
思い出……。
『心配すんな。全部が消えるわけじゃない。俺たちが一緒にいたことは、嘘じゃない』
涙を流すあたしの手を握り締める色羽の手があたたかい。
『あの頃の思い出は、俺たちだけの宝物』
あの頃の思い出を
時間とともに
少しずつ忘れていく。
それでもすべてが消えるわけじゃない。
大切なものはちゃんと残るから。
思い出として、心の中に。
残っていくから。
君の言葉を胸に刻む。
あの頃の3人。
あの頃の思い出。
それは、あたしたちだけの宝物。
『苦しまないで、華……。がんばりすぎるな。でも負けそうなときは、あの頃を懐かしんで。そしたらまた、思い出が色づく……』
色羽はあたしの手をぎゅっと力強く握り締めた。
色羽。
色羽。
何度も名前を呼ぶ。
笑顔の色羽。
色羽の手が、ゆっくりと離れていく。
行かないで、色羽。
あたしは必死にその手を握り締めた。
『そばにいる』
本当に?
『いつも見守ってる』
色羽……。
『つらくても下なんか向くな。空を見ろ』
色羽はあたしに微笑んだ。
『そしたら俺が、おまえに元気をあげるから』
うん。
わかった……わかったよ、色羽……。
つらいときは、空を見上げる。
『だからあんまり俺を心配させんなよ?おまえらのこと、笑顔で見守ってたいから』
わかった……。
心配かけてごめんね。
色羽……ありがと……。
『華、もう行け。アイツが待ってる……』