丸いテーブルの真ん中に鍋を置き、あたしたちは床に座った。
野菜、つみれ、魚……ぐつぐつと煮えている鍋からはいい匂いが漂ってくる。
「いただきまーす!……の前に乾杯しよっか」
そう言ってあたしは、缶ビールを手に持った。
「うん。かんぱーい」
砂歩とあたしは缶をぶつけ合う。
「それでそれで!?砂歩、いいことって、なにがあったの?」
「華、実はね……」
砂歩に起きた出来事。それは……。
「えー!?」
あたしは思わず大きな声を出してしまう。
「砂歩、結婚するのっ!?」
「えへへ。……うん」
砂歩は、いま付き合っている彼氏にプロポーズされ、結婚することになったらしい。
砂歩の彼氏は、砂歩と同じ信用金庫で働いている人で3歳年上の彼だ。
「おめでとーっ」
嬉しすぎて、あたしは砂歩にぎゅっと抱きつく。
「ありがとぉ、華」
砂歩の体から離れて、砂歩をまっすぐに見つめる。
「プロポーズは、いつされたの!?」
「うーんとね、先週」
「キャー!なんて?なんて?」
砂歩に顔を近づけて、あたしは目をパチパチとさせる。
「華ってば、興奮しすぎだからぁ」
「だってぇ~。もぉーあたしまでドキドキしてきたっ!」
「別に普通だよ?一緒にご飯食べてたら、彼が結婚しよっかって……」
「ぎゃ~」
興奮のあまり、あたしは床に転がり回る。
「落ちついてよ、華……恥ずかしいじゃん」
砂歩は照れて顔を赤くした。
「ごめんごめん。うれしくてつい興奮しちゃった」
あたしは起き上がって座り直す。
「それで結婚式はいつなの?」
「これから決めていく感じ。職場も同じだからさぁ、いろいろとあんのよね」
そう言って砂歩は、ビールを一気に飲んだ。
「はぁ~。砂歩の花嫁姿、ちょーきれいだろぉなぁ~」
あたしが想像して浮かれていると、砂歩があたしの顔を見つめているのに気づく。
「なに?砂歩……あたしの顔になんかついてる?」
「華は?」
「え?」
「このままでいいの……?」