「パパのおよめさんっ!」
そう言って、とびっきりの笑顔を見せた心ちゃん。
あらら……。
下を向いてしまった遊也くんと智也くんの肩を、ポンポンと優しく叩いてあたしは慰めた。
その時、保育園の門の方から声が聞こえた。
「イイ子にしてたー?」
遊也くんと智也くんのお母さんが保育園にお迎えに来たのだ。
お母さんに向かってうれしそうに微笑む双子。
「あやねー」
「あやねがきたー」
双子に名前を呼び捨てにされたお母さんは、すぐに双子の頬をつねる。
「コラ~。ママって呼びなさいって言ってるでしょ?」
「だってさ、あおだって、あやねってよんでるじゃーん」
「よんでるじゃーん」
「何回言えばわかるのよ。パパとママって呼・び・な・さ・い!」
双子のお父さんの名前は蒼(あお)さんでお母さんの名前は絢音(あやね)さん。
双子がしょっちゅう呼び捨てにしてるから、自然と覚えてしまった。
「華先生、すいません。うちの双子たち言うこと聞かなくて大変でしょ?」
「いえいえ。元気でなによりです」
「すみません。では連れて帰りますね。心ちゃんも今日はお母さんが用事あってお迎え来れないので、私が一緒に連れて帰りますから」
「はい、わかりました。ほら、3人とも!手を洗って帰る準備してきて」
「はーい!」
「へーい」
「ふぁーい」
3人とも返事が違う。可愛くて微笑ましいな。
3人の子供たちは、園庭から教室の中に走っていく。
あたしはお母さんのお腹を見つめた。
「だいぶお腹大きくなりましたね」
双子のお母さんは、現在3人目を妊娠中だ。
「ええ。おかげさまで」
「今度は双子ちゃんではないんですよね?」
「はい。さすがに大変すぎますよ、それは」
「ふふっ。男の子ですかね?女の子ですかね?」
「いまから楽しみです……生まれてきてくれるなら、それだけでもう幸せです……」
「また大切な宝物が増えますね」
「はい」
幸せそうに微笑むお母さんを見て、あたしもニコッと笑った。