ふたり、遠くを見つめて黙り込む。
穏やかに流れる波の音に耳を傾けた。
「華……俺さ、砂歩とは別れたんだ……」
成の横顔をあたしは見つめる。
「うん……砂歩から聞いてたよ……」
「え……?華、知ってたのか……?」
「うん……」
いまから約2ヶ月ほど前のこと――。
―――……
色羽のことがあって、夜も眠れず食欲もなかったあたしは、体育の時間に倒れて、病院に運ばれた。
色羽がいない毎日に、耐えられなかった。
苦しくて、どうしようもなく悲しくて、
頭も心もめちゃくちゃだったとき、色羽と約束した原っぱで、
雨の中、成の前で思い切り泣いた。
声が枯れるくらいに大声で泣き叫んだ。
あの日、体の力が一気に抜けていったような気がした。
周りの人を心配させたくなくて、無理して必死に明るく振舞ってた。
泣くことが出来なかったあたしに、
成が泣いてもいい場所を作ってくれた。
成と別れたことを砂歩があたしに打ち明けたのは、あの日から数日後の昼休みの時だった。
『華、ちょっとずつでいいから食べよ?』
『へへっ。食べてるよ?』
砂歩は自分のお弁当箱の中から、さくらんぼをつまんで微笑む。
『華、好きでしょ?はい、あーんして』
口を開けると、砂歩はあたしの口に、さくらんぼを入れた。
『おいし?』
『うんっ』
『よかった』
砂歩は、色羽のことがあってからずっと、そばで優しく見守っていてくれた。
無理やり励ますとか、そんなんじゃなくて。
出来るだけ普段どおりのあたしでいられるように、砂歩も普段と変わらない様子で接してくれていた。
『ねぇ、華』
『ん?』
『砂歩ね、成くんとは別れたから……』