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琉生と別れたあと、電車に乗って海へとやってきた。
穏やかな海を見ながら、砂浜に成とふたり並んで座っていた。
夕日で空がオレンジ色に染まり、海がキラキラと輝いて見える。
「どうしてこの海に?」
成が聞いた。
「うん……。数ヶ月前、まだ季節が春だった頃。この海にね、あたし……色羽とふたりで来たんだ」
「そっか……」
「色羽と遠出した最後の場所」
ここに色羽と一緒にいた。
色羽と一緒に波打ち際ではしゃいで、砂のお城も作って。
色羽の笑顔と。
普段は見せない色羽の弱い部分を見た。
この場所で。
「この海に来たいって言ったのは色羽なのか?」
「うん。色羽のお母さんが亡くなる前、最後に家族で遊びにきた場所なんだって」
「でも色羽のやつ、母親の記憶は、ほとんどないって言ってなかったっけ?」
「うん。でもね、色羽のお母さんがアルバムの写真に写ってた最後の場所が、この海だったんだって」
あたしの話を聞いて、成は微笑んだ。
「成……?」
「色羽がさ、華には母親の話ちゃんとしてたんだなって思ったら、なんか安心した。ほら、色羽のやつさ……俺らの前だとけっこう強がっちゃうタイプじゃん?」
あの日、色羽とこの海に来るまでは。
色羽が自分からお母さんの話をするまでは。
あたしは気づけなかった。
色羽の心の傷を。
心の痛みを。
だけどやっぱり成は、ずっと前から気づいていたんだね。
色羽が何も言わなくても、色羽の気持ち全部わかってたんだ。
「色羽があたしにお母さんの話をしたのは、その時だけだよ」
「でもさ……華だから、話せたんだと思うよ」
そう言って成は、優しく微笑んだ。