目を開けると、成はまだ手を合わせて目を閉じていた。
あたしが微笑むと、成はゆっくりと目を開けた。
「ずいぶん、色羽と話しこんでたみたいね」
あたしの言葉に成はニコッと微笑んだ。
「うん。話し足りないくらい……。色羽と話すこといっぱいあってさ」
「そうだね。あたしもたくさんある」
「だから話が長くても、ちゃんと聞けよなぁー!色羽のバカー!」
成は空に向かって、大きな声で叫んだ。
「ふふっ」
あたしが笑うと、成は首を傾げる。
「なに笑ってんだ?」
「成が“色羽のバカー!”って言ったから、色羽は絶対、成に後ろから蹴り入れるだろーなぁって思って」
――ガシッ。
「イテッ」
「色羽のかわりに、あたしが蹴り入れといたよー!」
あたしも空に向かって、大声で叫んだ。
今日は、空の色がきれい――。
ねぇ……色羽。
15年前に出逢ってから、いままで過ごしてきた思い出すべて。
これから先もずっと忘れないから――。
3人が初めて出逢った日、手を繋いで空を見た事。
幼い頃、原っぱで虫を追いかけた事や、田んぼに落ちた事も。
ふたりが黄色いタンポポの花をくれた事。
あたしのファーストキスを奪った事も。
毎朝、一緒に学校に通った事。
ケガをしても、バスケをやめなかった事。
あたしの部屋で寝相の悪いふたりに挟まれて寝た事。
自転車に無理やり3人乗りした事。
夏祭りに行って、夜空の花火を見た事。
線香花火をして、好きって言ってくれた事。
文化祭の時、あたしを探して見つけてくれた事。
泣いてるあたしを抱きしめてくれた事。
3人で流星群を見た事も。
春の海に連れて行ってくれた事も。
なにより……あたしを好きになってくれた事。
一途に初恋を想い続けてくれた事。
そう……思い出は数え切れないほどあって。
楽しい事も、つらい事もいっぱいあって。
でもそのすべてが、あたしたちの絆を深めてくれた。
だから、これから先も忘れない。
それを忘れてしまったら、
あたしはもう……
あたしじゃないって
そう思うから。