** 華side **



8月の中旬。



お盆休みになり、テレビのニュースでは各地の高速道路の渋滞情報が頻繁に報道されていた。



あたしは高校生活最後の夏休みを過ごしている。



眩しい太陽。鳴り止まない蝉の声。



真っ青な空、白い入道雲。深緑色をした山々、どこまでも続く田んぼや畑。



爽やかな風に吹かれて漂ってくる原っぱの草の匂い。



この田舎町に生まれ育ち、見慣れた景色の中で今年の夏も過ごしている。



――ピンポーン。



成とあたしは、色羽の家の前にいた。



――ピンポーン。



インターホンを鳴らしても、反応がない。



あたしたちは、色羽の家の門を勝手に開けて、庭の方へと歩いていく。



……やっぱりいた。



「おじさん!」



そうあたしが叫ぶと、縁側にひとりで座っていた色羽のお父さんは、ゆっくりと顔をこちらに向ける。



仕事人間だった色羽のお父さん。



色羽が死んでから、おじさんは仕事を休みがちになっていた。



ここ最近は家にこもりきりで、すっかり元気をなくしてしまっている。



成とあたしは、おじさんを間に挟むようにして縁側に座った。



「おじさん、俺らがピンポン鳴らしたの聞こえなかった?」



成が聞くと、おじさんは「あぁ、ごめんな」と表情を変えずに小さな声で言った。