傘を差しながら歩いていると、家の近くの原っぱに誰かがいることに気づく。
華……?
降りしきる雨に濡れる草の上、華がうつむいて、しゃがみこんでいた。
俺は華のそばに駆け寄り、しゃがんでいる華の頭の上に傘を傾けた。
「雨の中、なにしてんだよ?」
俺が声をかけると、華はゆっくりと顔をあげた。
その表情は、すごく悲しそうで、胸が苦しくなる。
「ただでさえ具合悪いのに、ずぶ濡れになってどーすんだよ……」
俺が華の腕を持ち、無理やり立ち上がらせようとするけど、華はその場から動こうとしない。
「華?」
「離して。あたしのことは……ほっといて」
「なんだよ、それ……」
ほっとけるわけないだろ。
「華、ほら!行くぞ」
「離してよっ!」
「華……」
「6時に原っぱで」
そう言って華は、俺を見つめた。
「色羽のこと待ってるの」
「華っ」
「約束したから……。色羽のこと、ここで待ってなきゃ」
込み上げてきた涙が、こぼれ落ちていく。
それでここから離れようとしないのか?