「初めてだねっ」



そう言って彼女は、満面の笑顔を見せた。



「初めて“砂歩”って呼んでくれた……。ありがと。いままでありがとっ!成くんを好きになって幸せだったから……泣かないよっ」



笑顔の彼女の目には涙が浮かぶ。



「大好きだったよ」



彼女は声を震わせて言った。



「また明日、学校でねっ」



そう言って彼女は、俺に手を振った。



俺が左手を上げると、彼女は微笑んだあと背を向けた。



小さな肩を震わせながら、メロンと歩いて去っていく。



“大好きだよ”って彼女が言うたびに、俺は“うん”としか言えなかった。



彼女がきっと、待ち続けていたはずの言葉。



ずっと言えなかった一言。



“俺も好きだよ”



いつか言えるようになりたかったけど、最後までその一言が言えなかった。



最後に彼女は“大好きだったよ”って、そう言った。



俺たちが過ごした時間を過去にするため。



思い出にするため。



今日からまた、新しい道を歩き出すために。



ありがとう。



こんな俺のこと好きになってくれて。



傷つけてごめんな。



ずっとそばにいて、幸せにしてあげられなくて、



本当にごめん。



それでも砂歩の幸せを



これからもずっと祈ってる――。