** 成side **



華の部屋をあとにした俺は、家に帰る気にもなれずに、あてもなく歩いていた。



高校の近くの運動公園が見えてくる。



俺はなんとなく、公園の方に足を進める。



ここは、色羽がよくバスケをしていた公園だ。



バスケットゴールの下に落ちていた1コのバスケットボール。



俺はボールを拾い、地面にバウンドさせる。



――ダン、ダン。



ボールを地面につく。



――ガンッ。



シュートを放ってみたけど、色羽のようにうまく入るわけもなく外した。



俺は地面にあおむけに寝っ転がった。



青い空に白いヒコーキ雲が一筋の線を描いていく。



俺は目を閉じて、大きく息を吸い込んだ。



なぁ、色羽……。



うちの親が離婚したときさ、慰めてくれたよな。



親父と琉生がいなくなって、寂しくてつらくて。



ばーちゃんと母親を俺がこれから守っていかなきゃいけないんだなって、なんか責任みたいなのも感じてて。



まだ小学生だった俺は、すごく不安だった。



でもあの時に言ってくれた色羽の言葉、ホントにうれしかったんだ俺。



“俺がいる。華だっている。俺たちは成のそばから絶対離れたりしねーから”



ふたりがいたから、明るくいられた。



頑張ろうって思えた。



俺を笑顔にしてくれたのは、色羽と華じゃんか。



あの時の言葉、もう忘れたのかよ……。



なぁ、色羽……。



「離れないって……そう言ったじゃんか……ふざけんなよぉ……」



涙が溢れて止まらなかった。



目元を右腕で覆い隠した。



俺がどんなに色羽が大事なのか、わかんないのか?



なんでいなくなんだよ。



勝手にいなくなってんじゃねーよ。



何も言わずに離れんなよ――。