――――――……
気がつくと、あたしはベッドの上だった。
「おかあ……さん……」
「華っ!」
お母さんが、ベッドのそばに立ってあたしを見下ろしていた。
「ここ……どこ?」
「病院よ。体育の授業中に倒れて病院に運ばれたのよ」
そうだ……。すごく息が苦しくなって、そのままあたし意識失っちゃったんだ。
「念のために検査したけど、少し貧血気味なこと以外は、他に異常は見られないって。華、つらいのはわかるけどちゃんと食べないと」
お母さんの作ってくれる料理は、すごくおいしいのに。
あれから全然食欲がなくて。
無理やり口に入れても、飲み込むのにすごく時間がかかって、すぐに気持ち悪くなってしまう。
お母さんの前では、ダイエットしてるからと明るく誤魔化していたけど、
そんなあたしのウソなんて、いま思えばお母さんにはバレバレだったんだろうな。
「ねぇ、華。夜眠れないなら、先生に相談してみる?」
「え?大丈夫だよぉ。ちゃんと寝てるってば」
お母さんは全部気づいてたんだ。
食欲がないことも、夜もほとんど眠れないことも。
あたしがいくら笑ってみせても、お母さんの心配そうな表情は変わらない。
「いろんなことが重なって、精神的なものからくる過呼吸だろうって先生が言ってたわ」
過呼吸……?それで息が出来ないような感じがして苦しくなったんだ。
「大丈夫だよ、お母さん」
「“大丈夫”その言葉。華の口癖ね」
あたしは微笑む。
「お母さん、この点滴が終わったら家に帰れる?」
「華……」
「早く家に帰りたい……」
お母さんはあたしの頭を優しく撫でた。
心配かけて、ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
お母さんのこと悲しませたくなかった。
だから無理してでも笑ってた。