体育の時間。
男女別々にわかれての、バスケだった。
あたしは壁にもたれて立ち、男子の方の試合を見つめていた。
――ダンッ、ダンッ……。
バスケットボールを床につく音。
――キュッ、キュ、キュ。
靴が床をこする音。
――パサッ……。
シュートが決まった時の音。
「色羽……」
どこ……?
色羽の声が聞きたいよ。
『華っ』
あたしの名前、呼んでよ。
『いまのシュート見た?華っ』
目を閉じれば、いまでも聞こえるのに。
色羽の笑い声……。
「色羽……?」
なのに目を開けると、どこにも見当たらない。
色羽の姿。
どこにもいない。
なんで……?なんでいないの……?
「なんでよぉ……っ」
胸が苦しい。
唇や手が震えてるのに気づく。
呼吸が速くなって、息がしづらい。
「……ヒッ……」
「華!?どしたの?」
「……砂……歩……ハァ、ハァ…」
「華っ!大丈夫!?」
「…んっ……ハァ、ハァ……」
頭がボーッとして……クラクラする……。
――ドサッ。
「華っ!?華っ!」
あたしを呼んでるのは、誰……?